アトピー性皮膚炎の治療については、10年ほど前マスコミ報道をきっかけに、ステロイド剤悪者説が沸騰。ステロイド離脱症状に苦しむ人が多いこともあって恐いステロイド剤での治療はイヤ!という人々が“効いた”“良かった”といわれる療法を求めてはさまざまな試行錯誤を重ねたのでした。
今も、ステロイド剤を嫌う傾向が、患者の側にあるものの、治療の現場では、塗り薬については、適切に使えばダメージは避けられ、良好な結果が得られるということが親身で丁寧なインフォームドコンセントのある場合には受け入れられつつあるといわれています。
軽快への道筋として、アレルギーの原因の除去と保湿剤やステロイド剤でふだんの生活を支え、さらにストレス解消のための「なにか」で少しずつ症状を改善していく…。この「なにか」の部分を担うひとつが温泉です。
昔ながらの温泉湯治が、いかに合理的で現代人にも大きな癒しの力を発揮するかは各温泉地での多くの実績が物語っています。
個々の症状に合った泉質の温泉を利用することで大きな改善効果が期待できるでしょう。
■掲載の温泉施設は、効能にアトピー性皮膚炎またはアトピーとある温泉施設です。
差し支えない範囲での実例やお勧めの入浴法、販売品などを紹介しています。
温泉成分中の陰イオンが炭酸水素イオンで、陽イオン成分としてナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどを単独、または複数含む。また二酸化炭素を含むなど、含有成分により、泉質は細かく分類される。
この泉質は皮膚の角質層を軟らかくし、皮膚表面の脂を乳化するため、「石鹸が落ちていないようなぬるぬるした感じ」といわれる皮膚のすべすべ感が特徴。皮脂が洗い流され、皮膚からの放熱が盛んになるので、浴後は清涼感があるが、湯冷めもしやすい。皮膚をなめらかにするので「美人の湯」「化粧の湯」とも呼ばれる。やけどや切り傷、皮膚病、アレルギー性疾患に効果が大きい。吸入でも気管支炎などに効果がある。特に重炭酸土類泉は、消炎作用や鎮静作用があり、入浴すると皮膚病やアレルギー性疾患に効果が大きい。
アトピー性皮膚炎だろうと、湿疹だろうと肌荒れだろうと「これこれ」という泉質である。世の中の『美人湯』はたいていこれなのだ。肌をやわらかく、すべすべにする重曹泉。
福岡市内のビジネスホテル萃豊閣ホテルは、宿泊か食事をしなければ入浴はできないが、立派な大浴場があり、田主丸の河童温泉から運ばれてくる湯がアトピー性皮膚炎に良いという。
別府温泉・つるみ荘の湯は本誌読者のお墨付き。自律神経からきたアトピーで2泊したところ、皮がボロボロ剥けたけれど、帰宅後しばらくは肌の状態も良くしっとり感も残り「温泉のすごさを実感した」そうだ。
オーナーの熱心な研究から生まれた鹿児島市吉田町の温泉施設スパ・ルルドの風呂は2槽ある湯船の湯が、交替で一定時間たつと自動的に入れ替わる。温泉自体の効能もめざましく、比較的短時間で効果の出る場合もあるが、入浴を続けることが大切。毎日温泉に入れない人のお助け化粧水や、保湿ジェル、石鹸、シャンプーやボディーソープなども開発・販売されている。
中津川鉱泉はおいしい水として全国にファンを持つ。入浴施設もあり、週一回くらいは入浴して、毎日1リットルずつの鉱泉を飲むと痒みが治まる。
広島県の君田温泉・森の泉では、源泉をガーゼなどに浸して塗ったり、湿布したりという方法で効いたという例があり、個人差は大きいながら肌に合えば、一カ月ほどで効果が出るという。
上湯温泉は、奈良県十津川温泉郷の最奥部に湧く温泉。大人のアトピーの人の利用が多く、滞在型の湯治施設もあったが現在休館中。入浴、宿泊は神湯荘へ。じゅくじゅくしたアトピー肌が乾いた状態になり、それにつれて痒みも軽減することが多い。飲泉も併用すれば、より早く効果が出るようだ。また、源泉肌水「美滴」はスプレーすると肌がつるつるになるという。
藤の森不動温泉・だるま湯は、高野山のふもと美里町に湧く。貴志川源流近くのだるま石渓谷で1988年、橋の掛け替え工事中に発見された。この偶然のように湧き出た温泉が、アトピー性皮膚炎に悩む人々や、糖尿病で血糖値に一喜一憂している人々のお助け温泉となったのである。
だるま湯にはさまざまな症状の人が訪れる。アトピー性皮膚炎で粉をふいたようになっていた肌が、主に飲泉と化粧水代わりに源泉を肌に擦り込んで、一年半ほどできれいになったとか、全身真っ赤になるほどの症状が、源泉を汲み帰って毎日自宅の風呂で浸かり、飲泉も併用したところ、徐々に赤みが引き、半年足らずでほとんどわからないまでになった、などの例がある。また源泉で顔を洗うだけでも肌がきれいになるという。
だるま湯では、多くの実例に接しているだけに、アトピー治療のむずかしさもわかっており、アレルゲン除去食などの相談にも応じてくれる。露天風呂が源泉掛け流しで、ゆっくり入れるよう温度も低めになっている。湯から上がったらそのまま、拭き取らずに軽く擦り込むようにすると効果的。飲泉は適量のコップ一杯を、ゆっくりと飲む。
美里町は空気と星空の美しい町として知られ、渓谷美を眺めながらの湯治は、心身のストレス解消効果も大きい。
大阪・泉佐野市の効く温泉、犬鳴山温泉の湯元温泉荘、外湯「山乃湯」には、アトピー治療に、週2〜3回通って来る人もいる。2、3才くらいまでの子どものアトピー性皮膚炎では、薬を使っていなければ、週1回の入浴でも二カ月程度。大人の場合は薬をのんだり塗ったりしていると、最低週1回通って一年くらいはかかるとのこと。毎日のように通って来ていた人は、完全治癒となった今も季節の変わり目にはやって来るという。薬で浅黒く堅くなっていた顔の皮膚が軟らかくなった人もいる。赤みや痒みがとれても止めずに入湯し続けることが肝心という。
薄く白濁した湯を掛け流しにしている、素朴な湯治場である。大阪から約1時間、周辺は深山幽谷の趣が深い。