◆◆ アトピー温泉 ◆◆

 アトピー性皮膚炎の治療については、10年ほど前マスコミ報道をきっかけに、ステロイド剤悪者説が沸騰。ステロイド離脱症状に苦しむ人が多いこともあって恐いステロイド剤での治療はイヤ!という人々が“効いた”“良かった”といわれる療法を求めてはさまざまな試行錯誤を重ねたのでした。

 今も、ステロイド剤を嫌う傾向が、患者の側にあるものの、治療の現場では、塗り薬については、適切に使えばダメージは避けられ、良好な結果が得られるということが親身で丁寧なインフォームドコンセントのある場合には受け入れられつつあるといわれています。

 軽快への道筋として、アレルギーの原因の除去と保湿剤やステロイド剤でふだんの生活を支え、さらにストレス解消のための「なにか」で少しずつ症状を改善していく…。この「なにか」の部分を担うひとつが温泉です。

 昔ながらの温泉湯治が、いかに合理的で現代人にも大きな癒しの力を発揮するかは各温泉地での多くの実績が物語っています。

 個々の症状に合った泉質の温泉を利用することで大きな改善効果が期待できるでしょう。

■掲載の温泉施設は、効能にアトピー性皮膚炎またはアトピーとある温泉施設です。
 差し支えない範囲での実例やお勧めの入浴法、販売品などを紹介しています。

【塩化物泉=食塩泉】

温泉水中の陰イオンの主成分が塩素イオンで、陽イオンの主成分、カルシウムやナトリウム、マグネシウムなどにより、泉質が分類される。さらに、二酸化炭素、重曹、ヨウ素などを含むものもあり、泉質は多様である。石鹸はよく泡立つ。

海辺に多く湧き、塩味がするなど海水に近い成分を持つ。塩分が肌に付着して水分の蒸発を抑えるので、保温効果が高く、湯冷めの心配はない。関節や筋肉の痛み、打ち身のほか、昔から切り傷、皮膚病、アセモを治す湯といわれ、最近ではアトピー性皮膚炎にも効能が知られている。

飲用すると胃酸の分泌を促し、胃腸病に効果を発揮するが、むくみの出る恐れがあるので高血圧症、肝臓病、心臓病の人には禁忌。

 飲用で胃酸の分泌が増す『胃腸の湯』だが、のぼせやすい湯でもあるので、高血圧や神経症の人は注意が必要である。

 福岡市内、井尻橋を中心に広がる博多温泉元祖元湯温泉は、オーナーが自宅で井戸を掘ったのが始まり。ここの湯は、ステロイドを使い続けたために使用を止めるとひどいぶり返しの来る離脱症状などのある、重症の人々の希望をつなぐ温泉である。軽トラックで温泉を運ぶ人、一ヶ月、二ヶ月、一年以上湯治を続ける人、さまざまである。

 同じく博多温泉・旅館富士の苑では、入浴一回目から痒みがとれ、続けると傷などは徐々に涸れていく。湯の中で皮膚を掻いて刺激すると、成分が滲み込んでさらに効果的。塩分でべたつく塩化物泉もあるが、ここの湯はべたつかず、加温、加水もない完全掛け流し。

 鹿児島県入来の諏訪温泉は、もとより湯治の宿。遠くからも来る湯治客の中には、子どもや赤ちゃんのアトピー性皮膚炎患者も珍しくない。以前、東京から里帰りがてら湯治に訪れた赤ちゃんは、一か月以上入浴。さらに帰京後も温泉を送っていたところ、三年ほどたって完治の礼状が届いたという。毎日温泉水を温めては患部を拭いていたそうだ。

 山口県・竜崎温泉潮風の湯は、痒みを緩和すると評判。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんが治療のために毎日入浴。その都度、温泉を持ち帰っては一日4〜5回体に塗り、一週間ほどでほとんど良くなったという。館内にはお礼に送られてきた写真が飾ってある。瀬戸内の島に湧くセピア色の湯で、周辺はハンググライダーやマリンスポーツのメッカ。

 兵庫県の東条川河畔一帯に数百年前から湧く東条温泉は神経痛、筋肉痛、痒みに効果がある。とどろき荘には夏はアセモの子どもが来る。ここの天然温泉に入ると痒みがとれ、ぐっすり眠れると定期的に通ってくる人も。アトピー性皮膚炎に関しても、子ども、大人を問わず年間通して入浴しに来る人は多く、泉質が合えば効果は期待できるという。

 鳥取県・皆生温泉は、海の浅瀬に湧き出す、100年前からの天然タラソテラピー温泉。皮膚疾患にはもちろん、循環器系の故障や神経症、ストレスにも効果が大きい。また秀峰大山を望み、白砂青松の海岸を散策できることなども、大きな転地療養効果を生む。