達人の弟子が行く
Vol.115


大分県・湯坪温泉 懐古乃宿 萬作屋
宮崎県延岡市 日向小町

 去る4月8日に、湯坪温泉『懐古乃宿萬作屋』に主人と二人で泊まって来ました。
 延岡では桜は満開、街中若葉があふれていましたが、阿蘇・南小国・九重と道を進むにつれて季節は逆戻り。辺りに緑はほとんどなく、所々に野焼きされた黒々とした大地が広がっていました。
 湯坪には、5〜6年前に一度泊まったことがあるのですが、その時とはほとんど風情は変わっていませんでした。観光化されていない地元で農業を営む人々の、飾らぬ暮らしぶりがうかがえる田園風景には心和むものがありました。萬作屋はそんなロケーションにぴったりと馴染んで佇んでおり、まさに懐古の宿にふさわしい雰囲気が宿の内外に漂っていました。
 私達の泊まった「たんぽぽ」という部屋は、母屋から石畳を5〜6m先にあり、部屋は隅々まで掃除が行き届いており、二人で泊まるには程良い広さでした。トイレも洗面所も完備、ゴミ箱、ティッシュボックス、額絵などの小物類がほとんど天然の素材の民芸調に統一されているのも、宿全体の雰囲気ととてもマッチしていて趣がありました。

「萬作屋」のバラ風呂
 部屋から風呂までは、石畳を備え付けの下駄をカラカラ鳴らせながら歩いて行きます。5つの家族風呂の中から私はバラ風呂を選んで入りました。石造りの丸い風呂の中に、色とりどりのバラが30輪ばかり浮かんでいて、湯舟に浸かるとぷーんと高貴な香りが漂ってきて、しばし日常を忘れて夢見心地のひとときを過ごしました。
 夕食前には、近くの畦道を主人と二人で散策しましたが、とてものどかで心が和みました。
 夕食は、築百五十年の庄屋を移築したという母屋でいただきました。馬刺し、地鶏のたたき、ユキノシタやフキノトウなど山菜の天ぷらなど地元の食材に一手間かけた創作料理は、見た目も鮮やかで味も絶品で大満足でした。また、平日だったので、もう一組のご夫婦とも話がはずみ、その輪の中に気さくで明るい女将さんも入って、まるで田舎の親戚の家に帰省して和気あいあいと食事をしているような錯覚さえ覚えました。
 今度は、緑あふれる季節にまた伺いますね、と女将さんと再開を約束して帰途に着きました。
 読者の皆さんも、機会があったらぜひ足を伸ばしてみてください!


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